かきかけの物語 かきかけ小説 MonkeyWrench BOLT1−4


 戦争が起きたその時代、首都では数多の武器職人が育てられた。
 「仲間を失わない為に、より強力な武器を創りなさい」
 大人になりかけの少年たちは、その言葉を信じて武器を創り続けた。

 銃を向け合った二者は、戦争が終わった時、二度と過ちを犯さないと誓い合った。
優れた、強力な武器を創れるように成長した少年たちは人殺しと呼ばれた。
 武器が、守るためではなく、殺すためのものだった事を、青年たちはその言葉で知った。
国は、捨てるべき武器を、恐れるべき諸悪の根源を、武器職人そのものと定めた。

武器造りしか知らない彼らは、首都から追い出された。
真っ黒平らになった戦場跡に辿り着いた彼らは、人のための物を創る街を創ろうと言った。
その場所が自分たちの街であることを表現するため、丸焦げの木っ端をありったけの接着剤に浸し、地面に突き建てた。接着剤が乾くまで木っ端を支えながら、炭で“Bondip=Enginearing“と書き込んだ。
 ―制御技術基礎教本 第三工学序論より抜粋

「おー、いいねー。これなら閉まった時に大きな音が出ない!」
 青空の下、ダンテは、修理済みの扉をすいすいと動かして感嘆した。扉のノブから手を離して、扉がゆっくりと閉まっていくのを見て、また、おー!と感嘆した。レンチは袋の中身を確認すると、肩に下げて、看板の下の扉に向き直った。その様子を見てか、ダンテが詫びるように言った。
「なんだか、いつも次々と仕事持ち帰らせるようで悪いね」
「いやぁ、まぁ、それが仕事ですから」
 レンチは愛想を見せるでもなく、無表情でそう言うと、窓から店内を見渡して、袋を背負い直した。袋からたまにチッチと金物の音が聞こえた。サンベルが袋の尾を掴んで見上げる。
「次は約束だよー」
「常連の相手は大変だね」
スキンヘッドが腕を組んでにやにやと笑った。
「あぁ、違いないね。…あれ?リーノは?」
「まだそこの広場で遊んでるよ」
 レンチは、顎で指された方にある広場に、リーノを見つけた。翼をぐっと押し込んで離し、パタパタと飛ばして遊んでいる。鳥のおもちゃの”飛ぶ機能”を教えた時のリーノの喜びようは最近では一番だった。
「大層お気に入りですね」
 睨みも笑いもせずに、レンチはその光景を背にした。
「じゃあ、ごちそうさま」
「またのご来店を」
「忘れないでよー?」

「飛んでけー!」
 リーノは、軽く上に投げる様にして、押し込んだ羽を離した。さっきまではサンベルも一緒に遊んでいたが、羨ましくてか、途中で店に帰ってしまった。それでもリーノは飽きずに、翼を押して、飛ばせて、拾ってを繰り返して、その羽ばたく姿に見入っていた。
投げたり、滑空させたりするおもちゃはサンベルと遊んだことがあった。でも、自分で羽ばたいて、飛んで行くおもちゃとの出会いは、初めてで、非常に新鮮だった。
 青空に向かって羽ばたく鳥を見上げて追いかけていると、草に足を絡ませて転んでしまった。
「いたたた」
 パタパタと飛ぶ鳥のおもちゃは、少しずつ羽ばたく間隔が遅くなり、ゆっくりと高度を落とした。草に触れるか触れないかのところで、手が差し出され、鳥はその上に降りた。
「へぇ。面白いねぇ。これ」
黒いスーツに、シルクハットを被った男は、屈んだ体を起こしながら、その鳥を掴んだ。裏返したり、回したりして、その造形に見入る。男は少し笑うと、鳥を胸ポケットにしまおうとした。
「え?返して!あたしが貰ったんだよ!」
 泣き出しそうな気持ちを抑えて、まだ起き上がれないまま、男に懇願した。男は、その顔を見て面白くなさそうに少女を睨む。
「ふーん。誰にもらったの?」
「・・・レンチのお兄ちゃんだよ」
 リーノは、店前から歩き去るレンチの後姿を指差す。男は目をとがらせたまま、刺された方を目で追った。袋を背負った若い男が目に入ると、にやりと笑った。
「へぇ、あんなに若い兄ちゃんがねぇ・・・」
 男は、立ち去ろうとして一度止まると、鳥を胸にしまって、リーノに向けて詫びを言った。
「お嬢ちゃん、これちょっと“借して”もらうね」

河上 貴翔 -kisho kawakami- -
かきかけの物語 かきかけ小説 MonkeyWrench BOLT1−4